【買わねぐていいんだ。】40話 講演会はたくさんの出会いの場

第7章 人を育てること、伸ばすこと

講演会はたくさんの出会いの場

 テレビや新聞で「カリスマ販売員」として取り上げられるようになってから、いろいろな場所での講演会に呼んでいただくことが多くなりました。北は北海道から南は九州まで、いろいろな場所でさまざまな業種・職種の方たちにお会いすることができ、とてもありがたいことだと思っています。
 呼んでいただく場は、本当にさまざま。一般の企業や自治体だけでなく、病院や製造業のお仕事をされている方たちに講演をさせていただいたこともあります。こんなことをお話しすると、「病院や製造業の仕事が、販売の仕事と関係あるの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
 確かに私がお話しできるのは、販売という自分の仕事に基づいた経験や考え方だけ。ですが、どんな業種・職種の方にもお話しするのは「どんな仕事でも、みんなサービス業だ」ということです。実際に物を売っていなくても、仕事の先には必ずお客さまがいます。そのことを忘れずにいることが大事なのではないか、ということをお話しさせていただくのでし。
 私の講演を聞いていただいて、「ぜひうちの会社で、もう一度講演してほしい!」とおっしゃっていただける方もおり、本当に感謝しております。

 そんな中で、私が「こんな講演をやってみたい」と、主催者の方にわがままをいってやらせていただいた企画がありました。それは、聞く側も参加型の講演会。ただ聞いているだけでなく、いろいろなことをやってもらいながらお話ししていくというものです。ここで、その講演会の模様を少しだけお話させていただこうと思います。
 まず、皆さんをいくつかのグループに分け、折り紙を使ったゲームをやってもらい、「人は言葉だけじゃ伝わらない。表情やしぐさ、全部を使うことが大事なんだ」ということを実感してもらいます。
 このときの講演会に来てくださっていた方々は、職場では部下や後輩を教える側、つまり管理職の地位にある方たちでした。こういった「人にものを教える側の人」が、普段どのように行動していて、どのように見られているのかを改めて考えてもらえばと思ったのです。
 部下を指導するとき、意外と言葉が足りなかったり誤解を与えてしまう行動を取っていることが多いのではないでしょうか。ゲームやお話をしながら、ご自分のそういったところを客観的に見ていってもらうようにと考えて講演会を進めていきました。
 ほかにも折り紙を使ったお話をいくつかして、最後には皆さんで折鶴を折ります。小さい頃などに、誰でも一度は折鶴を折ったことがあるでしょう。ですが、意外なことに、ほとんどの人は折り方を忘れてしまっているのです。30人ぐらいの講演会でも、折れるのはせいぜい2~3人ぐらい。中には途中で「もうわかんない!」と投げ出してしまう人もいます。
 皆さん、まさか自分が折鶴の折り方を忘れてしまっていたとは思わず、とても驚かれます。しかしそこで、「人はいくら昔できていても、トレーニングを続けていなければ必ず忘れる」ということをお話しするのです。これは人に教える立場の人も同じこと。何回も振り返って勉強しないと、教える側もそのうち忘れてしまうものなのです。
 こういった感じで、私は自分の経験や考え方などを皆さんにお伝えしています。講演会では全国の方たちにお会いすることができ、印象的な一期一会に出会えることも。励ましのお手紙をいただいたり、山形新幹線まで乗りに来てくださる方もおり、自分の仕事から、こうやって世界が広がることがとても嬉しく思っています。
 また、こういった経験から、私自身が「人に教えるということ、育てるということ」について考えることも多くなりました。講演会で自分の教え方を言葉にしてみると、とても客観的に物事が見えてきます。
「自分はいま、こういうふうに考えて教育している。でも、今やっている教え方で、本当に正しいのかな。効果のあるやり方なのだろうか」
 確固とした「自分らしいポリシー」を意識的に持ちながらも、そんな疑問を常に持つ。
そうすることで、「教える」ということから自分自身が「教えられる」こともあるのだと思っています。