第7章 人を育てること、伸ばすこと
◆選考会で感じたレベルの違い
リーダーからインストラクターになるためには、たくさんの試験や研修を受けなくてはなりません。まず、筆記テストと支店長の面接。そのうえで支店長推薦をもらい、次に本社の論文試験を受けます。この2つの段階で、かなりの人がふるいにかけられます。そして、これらを通過した人が、2泊3日の選考会に参加できるのです。
選考会では、実技指導する側と受ける側になって行い、それをインストラクターやチーフインストラクターの先輩方がチェックします。あまりの厳しさに、泣き出してしまう子もいれば、途中で帰ってしまった子もいるほどでした。
初めてこの選考会に参加できたとき、私は他の販売員たちとの圧倒的なレベルの差に愕然としたことを憶えています。厳しい試験を通過してきた販売員たちは全体的にとてもレベルが高く、すでにインストラクターとなっている先輩方と変わらないほどの実力があるように見える人もいました。
こういってしまっては言い訳に聞こえるかもしれませんが、山形営業支店の1期生だった私たちは、最初に一通りのマニュアルを教えてもらっただけで、あとはずっと一人で現場に立ってきたのです。わからないことがあっても、教えてもらう先輩もいません。
そのため自己流のやり方が身についてしまい、それがどうしても「クセ」として出てしまっていた。それゆえ、私は一回目の選考会でインストラクターになることはできませんでした。
しかし、あのときインストラクターやチーフインストラクターの先輩方を見て、
「わあーすごいな。シャンとしててかっこいいな。インストラクターってああゆうふうにするんだ」
と、そのすばらしい接客ぶりに憧れ、「また来年も受けたい!」と強く思ったのです。
もしこのとき、「私は私だから、もういいや」とあきらめてしまっていたら、きっと販売員としてそれ以上成長することはなかったでしょう。こうして、インストラクターへの憧れから、私は改めて「人に教えること」について勉強を始めるようになりました。
まず最初は、完璧にマニュアルを身につけるところから。次に、どのようにして後輩に指導するのがいいのか、それを考えました。
仕事には、作業の手順などのマニュアルはありますが、それをどう教えるかという決まりはありません。ですから、教え方ひとつで新人の仕事のとらえ方や身につけ方は大きく変わってきます。後輩には、何も知らない新人だけではなく、昔の私のように「自己流」のクセが身についてしまっている中堅さんもいます。
私が、どんな人に指導するときでも心がけていることは、「みんな同じじゃない」ということ。それぞれに教え方があって、伝え方も相手によって変えなくてはいけない。
たくさん褒めることで伸びる子もいれば、仕事に対する不安が大きい子にはしっかり付いて細かく教えることもあります。お客さまもそうですが、販売員にもそれぞれの「色」があり、その色に合わせて教えることが大事なのだと思います。
次の年の選考会で私は、無事にインストラクターになることができ、そして2006年にはチーフインストラクターへと昇格しました。