【買わねぐていいんだ。】26話 明日を迎えるために

第四章 私はただの物売りじゃない

◆明日を迎えるために

 私は仕事に行く前の日に、必ずその日のイメージトレーニングをします。「明日の何時頃、私はあの号車にいて、こういうことをやっている」とか「明日はこういう動きをしよう」ということから、「どんなお客さまが乗るんだろう」「どんな天気になるのかな」といった想像まで、あらゆることを考えます。

 どんな小さなことでも、毎日目標を持って仕事に挑むことが、私にとって日課となっているのです。もちろんそれらのすべてを完璧に実現することはできません。次への課題になることもあれば、大きな失敗をしてしまって、お客さまから厳しいご意見をいただくこともあります。
私は感情の起伏が激しいほうなので、仕事帰りの車のなかで運転ができなくなるほど泣いてしまうことも。
 「なんであんなことをしてしまったのだろう」
 「あのときお客さまは、どんな気持ちになったんだろう」
 そういった後悔や反省が心のなかに渦巻き、朝方まで眠れないこともあります。そんなときは、よく家族や友人に何時間でも話を聞いてもらっています。泣きながら1時間も2時間も電話で話をするというのは、友人からしてみれば迷惑なことかもしれませんが(笑)、そうやって人に話すことで、自分のなかで解決の糸口が見えてくるのです。
「じゃあ、あのときこうすればよかったんだ」
「次はこういうふうにやってみよう」
 私は、必ずそうやって答えを見つけてから寝るようにしています。どんなにたくさん考えても、結果としての現状は変わることはありません。そこで「起きてしまったことはしょうがない」と切り替え、考えを次へと持っていくのです。
自分のなかの問題を解決しないままにしておくと、必ずまた同じ失敗をしてしまう。その部分をクリアにしておかなければ、前進することはできません。
明日も楽しく新幹線に乗るために、お客さまとの新しい出会いに万全の態勢で挑めるように、私はこういったことをいつも心がけるようにしています。