【買わねぐていいんだ。】9話「私のアイデンティティ「ageha」

第二章目指せ、つばさレディ!

◆私のアイデンティティ「ageha」

『』 これまでお話ししてきたことからもわかる通り、高校生まではコギャルでした。では現在は?いま、私はage嬢のファッションが大好きで、休日にはage嬢の格好をしています。
 age嬢とは、『小悪魔ageha』という雑誌から生まれたファッションを楽しむ女の子たちのことで、キャバクラ嬢の格好がお手本です。フリフリのフリルやキラキラのラメをちりばめた洋服やメイクをして、髪型はカーラーで巻いて「盛る」。とにかく派手でかわいい格好が好きなのです。
 そんな恰好をしているため、仕事中の私しかしらないお客様に偶然外で会っても、あまり気付かれることはありません。講演会などに呼んでいただいても、私服で会場に入るとまさか講演者だとは思われず、だれからも気づかれることなく「茂木さんが来ない!」」と大騒ぎになることもよくあります。

 休日はまず美容院に行って髪型をセットしてもらうことから始まります。もちろん周りはこれからご出勤のキャバクラ嬢ばかり。髪型のセットで1500円かかるのですがお店に勤めているキャバクラ嬢はお店から500円のサポートが出るらしく、自分で払うのは1000円だけで済むそうです。
 私はいつも1500円払ってセットしてもらうのですが、たまにキャバクラ嬢と間違われて1000円のお会計で済んでしまうことも。そして好きな格好、好きなメイクをして友達と遊びに出かけるのです。

 たった一日の休日のために、どうしてそこまで時間とお金をかけてオシャレするのか?みなさんは不思議に思うかもしれません。でも私にとって、age嬢のファッションを楽しむことは、「自分を取り戻す」ために大切なことなのです。
 私は仕事でお客さまと接するとき、そのお客様の色に染まってしまいます。人にはそれぞれの「色」がありその色に染まることでそのお客さまとの距離がぐっと縮まる。そうやってひとりひとりのお客さまの色に染まることを、私は仕事をするうえでとても大切にしています。だからこそ私は常に透明でありたいと考えています。
 ですが、毎日透明になっていろいろな色に染まっていると、次第に「自分はどんな存在だったっけ?」という気持ちになってしまう。だんだんと気持ちがずれてきて、自分がどんな人間なのか、どういうことをやりたいと思っているのかがわからなくなってしまう。
 そんなとき私は、思いっきり自分の好きな格好をしてプライベートを楽しみます。
「今日はこの服を着よう」
「今日はピンクの口紅をしょうかな」
 そう考えることで自分の主張を取り戻していきます。私にとって、age嬢のファッションをすることは大切なアイデンティティのひとつなのです。