【買わねぐていいんだ。】13話「フランス旅行と謎のおじいちゃん」

第三章 買ってあげたいと思われる人になりなさい

◆フランス旅行と謎のおじいちゃん

 ルンルン気分でフランスへと旅立った私ですが、またもや旅行先でも大きな出来事が待ち受けていました。
 当時の私はまだコギャル全盛期で、髪の毛も毎日黒い毛染めスプレーをして茶髪を隠していました。もちろんフランスでも動じることなくバリバリのコギャル姿。同行した会社のお偉いさんたちの前でも動じることなく、「あそこさ行ぐでえ!買い物さんなんね!」とはしゃいでいたのです。
そんななかに、おおはしゃぎの私を見ながら、苦虫を嚙み潰したように機嫌の悪い顔をしたおじいちゃんがひとり。明らかに私を避けている・・・。それでも私は、「せっかくのフランスなんだから、あんなおじいちゃんに構っていられるか!」と旅行中はまるで無視して楽しんでいました。
 実はこのおじいちゃん、なんとわが社の社長だったのです!そんなことも知らずにいた私は、旅行の最終日におじいちゃんからこういわれました。
「この旅行には、それなりにお金がかかっているんだ。だから、君は一番になって旅行に来てくれたけど、この旅行を励みにして、これからももっともっとがんばってほしいんだ」
 この言葉を聞いて、私はハッと気づきました。
(そうだよな・・・・。こんな楽しい思いをさせてもらったぶん、恩返ししなきゃなんねんだな・・・)
 この旅行はご褒美ではあるけども、これからもがんばってほしいという励ましでもあったのです。
 そして、社長が初日から機嫌が悪かった理由もわかりました。それは、「売上ナンバーワンの子なのに、なんだかイメージが違う」ということ。それだけすごい子なんだから、きっと上品でビシッとした女性なんだろうと思って居たら、やってきたのはギャハギャハ騒いでいるコギャル・・・・。そのギャップに、怒りさえ感じたのもしょうがないことかもしれません(笑)
「俺のイメージしていたのと全然違った」
 といいながらも、「これからも、もっとがんばってね」という社長からの励ましの言葉は、何よりもかけがえのないプレゼントでした。

 ところが日本に帰ってみると、支店長からいきなりの怒号がーーーーーー。
「お前、フランスで何しでかしてきたんだ!!」
 突然のことに驚き、「えー!私何にもしてませんよ!」と答えました。どうやら旅行の初日に、私に対して怒った社長から「何でこの子を連れてきたんだ」と支店長に電話が入っていたようなのです。
 もちろん、最終日には社長とそのようなお話をしていたのですが、そのことを知らない支店長が、私がとんでもない問題を起こしたと青くなっていたのです。
フランス旅行の最後の最後には、こんな思わぬ落とし穴が隠れていたのでした・・・・。